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10.披露パーティーでひと悶着ありそうな予感がいたします。 その2

last update Dernière mise à jour: 2025-06-29 22:33:45

――イヤリングの右側には監視カメラが、左側にはGPSが内蔵されています。決して外したり、他人に預けたりなさいませんように。

 私はその注意書きを確認すると、小さく頷いて慎重にイヤリングを身に着けた。ブラックパールの真珠部分は、カメラを巧妙に隠すため通常より一回り大きく作られているが、その内側に仕込まれた超小型カメラは、ごく至近距離で凝視されない限り気づかれないほど巧妙な出来栄えだった。精緻に施された色合いやデザインも、普通の宝飾品と変わらない美しさだ。

 イヤリングを着け終えると、中松が改めて私の装いをじっと見つめながら口を開いた。

「おや、イヤリングが予想以上に大きいためか、首元が少々淋しく見えますね。伊織様、本日のドレスには、もう一つ華やかなダイヤの首飾りをお付けしましょうか」

 彼の言葉に応える前に、ちらりと時計に視線を落とす。パーティーの開始は午後六時。まずは一矢の挨拶があり、その後、婚約者として紹介を受けて私が挨拶をすることになっている。その後乾杯の音頭があり、歓談と立食形式で食事を楽しんでいただく流れだ。締めには改めて一矢が挨拶を行う手はずである。

 現在の時刻は午後五時ちょうど。かなり早めに準備を始めていたおかげで、まだ時間には余裕があった。

 本日の会場は、日本を代表する大企業とアメリカの大手ホテルチェーンが合同で経営している人気のウェスティンホテル。料理の美味しさだけでなく、華やかなスイーツバイキングも評判で、今回のような商談を兼ねる立食パーティーには最適な場所だという。一矢が選んだのは、その中でも特に眺望が美しいと評判のフロアだった。着席スタイルなら百五十人ほど、立食なら二百人以上が余裕で収容可能だと聞いている。

 実際にどれほどの人数が招待されているかは私は把握していなかったが、招待状を持っていない者は、身内であってもこのパーティーには一切入れない仕組みになっているそうだ。今日は主に一矢の会社関係者や取引先、一矢と個人的に親しい方々が招かれていると聞いていた。

 もっとも、今回の婚約披露パーティーの目的はただのお披露目ではない。むしろ、一矢を取り巻く有象無象の『虫よけ』の意味合いが強い。花蓮様のように、一矢自身を慕う女性や、その娘を一矢にあてがおうと狙う家族も非常に多いと聞く。一矢がビジネスで成功を収め、会社が軌道に乗り始めてからは、特に
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     いよいよ待ちに待った結婚式前日を迎えた。グリーンバンブーは日曜日が定休日なので、日曜日に挙式をすることになっている。前日から式場の近くにある豪華ホテルに宿泊し、全身エステにマッサージ、最終衣装合わせ、さらにはネイルやヘアスタイリングなど、明日に向けて万全の準備を整えることになった。 本来なら今日もグリーンバンブーで忙しく働き、汗まみれになっていたはずだけれど、今日は特別な日。いつもと違う意味で『つるつるピカピカ』になり、最高に幸せな気分を味わっている。定食屋の厨房で汗だくになっているのとは、比べ物にならないくらい別次元だ。 夜は旦那様(本物)とホテルの高級レストランで優雅なディナーを楽しみ、素敵な時間をゆったりと過ごした。バーではシャンパンを少し嗜みながら、ふと甘えたくなって隣に座る一矢の肩にもたれかかった。「もう酔ったのか?」 一矢が優しい口調で尋ねてくる。「ううん。酔ってないよ。ただ、独身最後の夜を噛み締めているの。色々あったなあって、ちょっとしみじみしてただけ」「部屋でゆっくり話すか?」「うん、そうしたいな。一矢に思いっきり甘えたい気分」「うむ、悪くない提案だな」 一矢が照れたように微笑む。普段のビジネス用のスーツ姿も十分カッコいいけれど、今日のフォーマルな装いはそれ以上に素敵だ。 今日は私もプロの手でドレスアップしているから、一矢の横に並んでも違和感がないことが嬉しい。この前グリーンバンブーで感じた切なさとはまったく違う。この差を思い出すと少し胸が痛むけれど、今夜は深く考えるのをやめておこう。 部屋はホテルの最上階にある、贅の限りを尽くしたロイヤルデラックススウィートルームだ。こんな部屋に泊まれる日が来るなんて、夢にも思わなかった。しかも、愛する人と二人きりなんて、まるで夢のよう。 部屋に入った途端、一矢が私をそっと抱き寄せる。「今日の伊織は本当に綺麗だ。私のために美しくなってくれたのなら、これ以上嬉しいことはないな」 甘く優しい囁きが耳元に響き、体がぞくぞくと震える。極上のエステやマッサージで磨かれ、文字通りつるつるピカピカになった私を、旦那様(本物)はこのまま愛でるつもりらしい。「ちょっと、お喋りは……?」 照れ隠しに軽く抵抗してみる。「愛を囁きながらでも、会話くらいはできるさ」「きゃっ」 力強い腕に優しく抱きか

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